Slit Park YURAKUCHO
本計画は、有楽町エリアの中心に位置する「新国際ビル」と「新日石ビル」の2つの建物の間に位置する小さな路地の改修である。 有楽町の街区は 100m のグリッド形状を基本として分割されており、大丸有から続く100mの街割りは整然と美しい街並みの形成に一役買っているが、歩行者の視点で通りを歩くにはいささか長く単調である。1950 年代からの開発では、100m 角のビルの 1 階を十字に貫く通路を通し街区の内外の回遊性を高める動きが生まれた。そんな中、『Slit Park』 がある街区は地権者が複数いたためか、十字路が形成されぬまま時が流れた。
建築設計を担当した三菱地所設計+Open Aの計画は、新国際ビルを本来の街の目指す街区のリズムに再び接続するべく、建物内の丸の内仲通りに面するエントランスの正面突き当たりにあった事務室を移設し、奥の路地裏までをつなぎ、ビルの内外を貫通して丸の内仲通りと大名小路を繋ぐ〝小路〟を作り出すというものだった。そこには、敷地の内と外、通りと建物、屋内と屋外といった様々な境界に風穴を開け、隣り合うものを繋ぐ強い意志が感じられた。 その志を引き継ぎ、「Slit Park YURAKUCHO」に隣接する環境や人の振る舞いの境界を滑らかにつなげる装置としての外構・家具設計をTAAOで担当した。
路地の南東にあたる大名小路側では、前面歩道に敷きこまれたインターロッキング舗装を敷地内の路面まで引き込む建築計画の操作に呼応して、前面道路の並木道的性格を敷地内へと引き込むベく大型ムーバブルツリーや地植花壇を設置した。 大型の樹木の影に多様な人の振る舞いを許容する家具を忍び込ませることで、せわしない環境でありながら路地裏特有の守られた居心地を作り出した。 ラウンジ側は、建物内から路地へのインターロッキングの張り伸ばしに合わせて床面が隆起したような階段状ベンチを作り、内から外への人の居場所の染み出しと共に路地の角に活動の起点となる広場性を与えた。 丸の内4番街側では、すでに前面道路のアスファルト舗装が敷地内にまで連続していたことから、敷地内においても道路に見られる白線やガードレールなどの言語を流用しながらキッチンカーの駐車スペースや自転車置場の整理行った。 什器の作りとしては、出会いの森をコンセプトに掲げ運営を行う東邦レオ社の空間ブランディングを、ハード面でも後押しすべく丸太や岩のような野性味ある素材を人工物とハイブリッドして家具に用いることで、〝都市と森〟の両方の感覚を持ち合わせるデザインとした。 有楽町の〝これから〟を考える三菱地所の下、都市・街区レベルの視点での建築計画、人の振る舞いを喚起するグランドレベルの視点での家具計画、路地に根付く草木の1本1本のあり方を考える植栽計画、新たな活動を生み出す運営の視点に至るまで、はりめぐらされたまちづくりの意思は複数の設計主体により連歌のように引き継がれ、新国際ビルの裏路地に新たな活動の種として埋め込まれた。
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所在地:東京都千代田区丸の内3丁目4-1
家具設計・外構設計:TAAO 會田倫久
実施設計協力・監理協力:スタジオキノコ
建築設計:三菱地所設計+オープン・エー
植栽:東邦レオ
企画・プロデュース/三菱地所
まちデザインコンセプト:三菱地所設計
施工:藤倉工務店(建築) デザインアートセンター(家具)
竣工:2022年6月
写真:長谷川健太