Clinic gallery furnitures
clinicは三軒茶屋の商店街に面した旗竿型敷地の奥にひっそりと佇むローカルオルタナティブスペースである。 もともとは2017年に旧診療所跡地であった建物をスキーマ建築計画が1棟まるごと改修し、現在は通り側のテナントにBlue Bottle Coffeeが入っている。その裏手に当たるclinicのスペースでは、地域と芸術を愛した院長の意思を引き継ぎ、生活を豊かにする造形・文化活動を発信している。三軒茶屋では知る人ぞ知るスペースである。
そんなclinicがこの春より美術展示だけでなくショップ系イベントを本格展開していくにあたり、ブックショップのPOSTを招くことが決まった。当初はそのための展示会場構成として設計の依頼を頂いた。 しかし、よくよく話を聞いてみると年6回程度のコンテンツ変えを想定している一方で、展示ごとの予算や準備期間は限られていた。一回性の高い展示空間を作り込むことより、持続的なスペース運営を後押しする〝しくみ〟を考えることが必要に思われた。 そこで展示内容や商品に合わせてフレキシブルに対応出来、スペースオーナー自らが持続的に空間をコントロールできるベース什器の設定が必要と考え、施工のプロでなくてもコンテンツに応じて簡単に組み替えられるノックダウン式の什器システムを提案した。
資材調達やメンテナンスにおいても持続性を考慮し、材料は全てホームセンターで入手可能なものから選定された。什器を構成するメインマテリアルとして、一般的に農業用のビニールハウスのフレームとして使われるZAMパイプφ19mmとくさび式のジョイント金物とし、板材には構造用合板12mmを採用した。農業用ビニルハウスのパーツは、農家の方が自主施工することを考慮して作られているため軽量かつ安価であり、ハンマー1本で組立て解体が可能なユーザーフレンドリーなプロダクトである。パイプの長さ寸法は、450mm、900mm、1800mm、2100mmの4種類を用意し、2種類のジョイント金物を利用した幾つかの組み方を考案し、POSTの展示イベントでは棚・平台・屋外仮設広告の3種類の什器が制作された。 初回の展示を終えた頃、オーナーからハンマーやらパイプカッターやらの工具を入手したとの連絡があった。今後この什器のシステムがどのように使われてゆくのかとても楽しみだ。
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所在地:東京都世田谷区三軒茶屋1丁目33−18
用途:ギャラリー
設計:TAAO 會田倫久
施工協力:team
竣工:2021年10月
写真:仲野康則 (15−20枚目 clinic)