大多喜有用植物苑
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所在地:千葉県 夷隅郡 大多喜町 小土呂 2423
空間デザインディレクション : swarm inc.
建築内装設計:TAAO 會田倫久
建築設計協力:アトリエ n.o
マテリアルディレクション:suha
家具設計:TAAO 會田倫久 、suha (食堂客席家具)
建築工事 :平林建設
内装工事 :ロンテック
家具工事 (日本製作):デザインアートセンター
家具工事 (インドネシア製作):suha
左官工事:左官都倉
植栽計画:維苑
植栽施工:ユニバーサル園芸社
サイン計画:Carpenter & Stone
サイン工事: フレンズ
プロデュース:維苑
プロジェクトマネージメント:上村直人
竣工:2026年4月
写真:大竹央祐
3D render:studio anettai
大多喜有用植物苑
大多喜有用植物苑は、東アジア及び東南アジアの有用植物が植栽された庭である。有用植物とは、食料品・薬に始まり、衣料・燃料・香料・建材・観賞、など人間の生活のさまざまな場面で役立に立つ植物の総称だ。大多喜有用植物苑はそんな古来から続く人と植物の有機的な関係を、庭・食堂・ショップ・ラボといったプログラムを通し、各々の生活に合ったかたちで日常に持ち帰ってもらうことを目的とした体験型複合施設である。
施設の計画を進めるにあたり、まずは日本を含むアジアの国々の生活や文化の観察を行った。アジアにはその領域の広さから、気候帯に応じた実に様々な生活様式がある。その生活の様相をつぶさに観察すると、身の回りのいたる所に植物との親密な関係が溢れており、実に様々なレイヤーで植物が人の生活の中に入り込んでいることが見て取れる。気候は地域固有の植生を生み、人の営みをつくり、文化をつくる。植物というレンズを通して眺めた世界では環境・植物・人の振る舞い、の〝みつどもえの関係〟があった。本計画では、そんな日本を含むアジアの国から得た知見をもとに、敷地内の各所で人と植物と空間の有機的な関係をつくりだし、各々の暮らしに合った植物との関係の種を採取してもらうことを目指し施設計画を行った。
植物の生育環境の異なる2つの棟
計画の初期段階で、老朽化した巨大なガラス温室の構造及び空調環境の整備をおこない、人の営みと植物を受け入れる器としての環境整備を行なった。構造計画としては、補強工事の複雑化を避けるため元々は重量鉄骨造と軽量鉄骨造が組み合わさった巨大な1棟のガラス温室であった既存建物を、構造形式の切り替わる部分で解体・分離し、天井高さのある切妻架構をもつA棟、フラットな柱梁の架構をもつB棟に分けた。A棟に対しては充分に構造の補強をおこなった上で、解体部にサッシュを新設し内部化の上、空調を行い温室環境とした。B棟に関しては、屋根を含む外装サッシュを取り払い風圧の影響を受けにくいフレームの状態まで戻した上で、既存耐震要素の整備を行い室内を屋外と同等の環境まで戻した。
また、敷地のある千葉県はケッペンの気候区分によれば温帯 温暖湿潤気候(Cfa)に属し、その中でも大多喜町は房総半島の内陸部に位置するため内陸性気候に近い。年間の平均気温は15.8℃~16.0℃と温暖ではあるものの、海岸沿いのエリアに比べると朝晩の寒暖差がやや大きいのがこの地域の気候特性である。また、冬季も基本的に温暖だが、南岸低気圧の影響で1月~2月に雪が降ることもある。
通年安定した温熱環境のあるA棟では、主に10-30℃の温度帯が適正な生育環境となる常緑の有用植物を配置した。加えて温室内に、地中リビング・高床リビング・軒下リビング・縁側リビングの4つのエリアを設け、常緑の草木を常にそこにいる良き隣人として見立て、植物と共に時間を過ごす滞在の庭とした。プランニングとしては、温室をL型に囲む形で食堂とショップを配置し回遊的な動線計画を組むことで、温室と食堂、温室とショップ、食堂とショップをそれぞれ回遊しながら、食やプロダクトを通しても植物との関係を発見できる計画としている。
外皮が取り去られ四季を取り戻したB棟では、落葉、花木、紅葉樹など気温によって変化が見られる樹木を中心に配置した。庭の様相は季節とともに常に変化する。そこでは畑を耕し、時には作物を育て、植物も人も共に成長する動きのある庭として計画を行なった。また、既存建物を解体して残されたフレームを利用して人の居場所の一部にルーバー状の日除けを設置した。屋内おいても夏場の厳しい日差しから身を隠す拠り所を設けることで庭エリアの積極的な回遊を後押しする計画とした。また、B棟で収穫した作物を加工してプロダクト開発を行うラボを、庭に面したA棟の1角に配置し将来を見据えた生産活動の拠点とした。
インテリアや家具においても植物の有用のあり方を楽しんでもらえると良いと考え、施設各所で身の回りにある植物性の素材、植物由来の技法を用いたプロダクトのデザインを行い、来館者に実際に手に取り触れてもらいながらその有用の一端を楽しめる計画を行った。